2013年7月15日月曜日

蝉の羽

十数年ぶりに図書館に足を運びました。
日頃から活字中毒気味で、本屋も古本屋も飽きずに通っているのですが、図書館は学生の時以来でした。
学生の時は、暇があれば学校の図書館にいて、山間の長閑な場所にキャンパスがあったので、窓際で緑の山々を視界に捕らえつつ課題をこなして、息抜きに誰も手に取った形跡のない、中国古典の全集なんかを広げて読んでいました。家に帰れば、自分で買い溜めた本を片っ端から乱読するような学生時代でした。思えば、あの頃のバイト代は、ほぼ本とCDとライヴのチケットと化していました。われながら幸せな学生時代です。

最近、読みたい本が何冊かまとまって出てきたので、山積みの未読の本たちを差し置いて、また新しく購入するのも忍びなく、家で読んでいると眠気に勝てずにマッタリと昼寝してしまうので、いっそ図書館に行ってみよう!と。公共の図書館は、それこそ高校時代以来になります。

分館ですので、期待せずに行ったのですが、思ったよりも使えそう(失礼)で、ウキウキしてしまいました。目的の本は、本館や、他の分館から取り寄せてもらわないといけなさそうでしたが、うろうろ歩き回るうちに、ふと「志村ふくみ」と背表紙にある本が。タイトルは『ちよう、はたり』。

開いてみて、はたして私の知っている志村ふくみさんでした。草木染めの染色家。染め上げた絹糸で自ら機を織る着物作家さんでもあります。少し前にNHKの『プロフェッショナル』で取り上げられていて、ご本人のお仕事される様を初めて見ました。その時は色に寄せる想いの強さに圧倒されましたが、今日手にとった本で感じられたのは、また少し違う表情でした。
71歳から78歳の間にさまざまな雑誌に掲載された短いエッセイを集めた本。色に対する情熱はもちろん垣間見れるのですが、それ以上に、積み重ねられた深い教養や、文筆のセンスが感じられて、文筆家としても素晴らしい才能をもっていらっしゃるようです。
「ゲーテの色彩論から、緑色を得る」なんて、あんなに柔らかく深い色の織物に、硬質な煩悶と、きらきらした純粋な子供のような好奇心が共に染められて、織り込まれているのだと知りました。

織りの仕事はいやでも毎日するのだから、何かほかのことをやりなさい、といわれて、志村さんが「本を読むこと」と答えると、「それが栄養源だし、潤滑油なんだ」といわれたというエピソードが響きました。自分の興味や趣味が、日々の仕事と乖離することなく、自分の中で繋がり、鼓舞し合うのだとしたら。お上に決められた形ばかりの“ワークライフバランス”は、なんて薄っぺらい思想なのかと思うのです。

単純に、自分は本がある空間自体が好きなのですが、思わぬ出会いにも恵まれましたし、居心地のよさを思い出させてもらったので、また図書館に行く機会は増えそうです。

暑さも本格的になってきて、蝉の声もにぎやかになってきました。
今日の着物は、夏ならではの素材。
絹芭蕉布の染め紬に、紙布織の夏帯です。
着物は、先日鎌倉のきたの屋さん(HPの様子がおかしいのでリンクはやめておきます)で購入しました。仕立て上がりの状態でしたが、居敷き当てがついていなかったので、自分で見よう見まねで縫い付けました。地色は緑で、そこにストライプとドットが染められている、かなりモダンな染め柄ですが、渋い着物になってます。一応証書も付いていて、天然繭と芭蕉の交織で、染を施したもの、らしいです。
麻や芭蕉布の生地は蝉の羽に例えられるほど薄く軽いのが特徴ですので、かなり透け感が強く、着心地は非常に軽いです。張りのある織地なので、シワが付きやすいかな、と心配したのですが、思ったよりもしなやかでした。
もしかしたら、湯のしや湯通しをしていなくて、張りが残った生地感になっているのかもしれないので、今度お直しの先生がいらっしゃる機会に見ていただこうかと思っています。着終わって確認したら、背伏せの黒だけが襦袢に移っていましたが、着物自体の色移りは無くて一安心でした。
リサイクル着物は、お手ごろですが、来歴の分からないものもた~くさんありますので、ほどほどの値段がする場合、ご購入の際には、覚悟を決めて腹を括りましょう!安いから、ではなく、これから手が掛かるかもしれなくても、「着たい」と思えるものならば、生かし合えるんではないでしょうか。



ちよう、はたり (ちくま文庫)

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